受注の手応えが見えはじめた頃、技術チームでも未知の海洋構造物に挑む準備が進んでいた。当社にはSEP船「CP-8001」を建造した経験がある。ただし本船は、昇降方式が歯車でレグを動かすラック&ピニオン方式と呼ばれる方式で、「CP-8001」とはタイプがまるで違っていた。基本設計はGustoMSC社が担うが、現場に落とし込むための情報は驚くほど少ない。経験は、そのままでは使えなかったのである。
そこで立ち上げたのが、Working Group(WG)だった。一般の船にはない特殊な構造や機器について、設計から製造、搭載、調整、試験終了までを一貫してフォローする。そのためにメンバーを完成まで固定したチームである。メーカーを含む関係者で情報を洗い出し、整理し、共有する。製作要領と必要期間を、ゼロから描き起こしていった。
本船の規模は、社内でも異例だった。基本設計フェーズには30名以上が関わり、一般商船の数倍のコストがかかる大プロジェクト。問題が起これば大変なことになると、社内には危惧する声が多々あった。期待も注目も、そして心配も、同時に集まっていたのである。
造るべきものも前例がなかった。全長92mの4本のレグは日本で鋼材を加工し、シンガポールで組み立てて再び日本へ運び、呉で下半分、相生で上半分を搭載して溶接でつないだ。レグを動かし船体を持ち上げる歯車機構の昇降装置はレグ1本あたり24基、4本で計96基におよぶ。主にドイツで製作されたパーツを呉で組み上げ、ひとつずつ船体に搭載していく。揚重能力2,500トン、揚重高さ158mのクレーンには、消防のはしご車のようにブームを伸ばすテレスコピック機構を採用した。この規模のクレーンでの採用は、世界初の試みであった。