技術とデータを駆使し、
船の性能は
まだまだ進化する。


What’sJMUの注力技術

実海域性能とは実際に航行する風や波がある中での船の性能を指します。 その性能を向上させるために様々な技術開発を行っています。
船が受ける水や空気の抵抗を小さくするための流体技術、猛烈な自然環境でも安全性を担保する構造技術、それらに必要なデータを収集する情報処理技術など、様々な方面でアプローチを行います。

Sea-Navi®2.0によるモニタリング

Whyなぜその技術が必要か

航海中の燃費性能は、船にとって極めて重要な要素です。 近年の地球温暖化問題の深刻化に伴い、船舶からの温室効果ガス削減のために船舶の省エネ化の重要性はさらに高まっています。 そのため、JMUでも実海域での船の性能向上には特に力を入れています。

性能向上のために改善点や現状を把握するには、正確かつ詳細なデータが必要です。
就航後の船の様子を詳細にモニタリングできるシステムが開発されたのは2000年代に入ってから。 これまでの船の常識は、水槽試験やシミュレーションの仮説に基づいたものが多く、実際に船が就航したデータとは合致するとは限らないのが現状です。 模型の試験データ+就航後のモニタリングデータ+船の知識を全て備える造船所独自のノウハウを活かした「船に特化した」モニタリングシステムで、計算処理やデータの可視化に強みを持つJMU。 物理的にも規約的にも制約の多いこれまでの船づくりのあり方に、風穴を開けることができる可能性を秘めています。

また、JMUでは水や空気の抵抗が少ない船の形状を見出すために必要な、流体技術(※1)や構造技術(※2)に特化した研究グループを持っています。 加えて、開発を行う設備についても、世界最大規模の水槽やさまざまな波を再現できる機器など多様な研究を可能にする環境が整っています。 専門チームと充実した設備による研究結果を駆使し、抵抗を最小限に抑えた高性能な船の開発にあたっています。

  • ※1 流体技術: 船や海洋構造物のまわりの水や空気の流れを評価し、燃費性能や船体運動を研究・評価する技術のこと (流体技術/技術開発
  • ※2 構造技術: 船の「ボディ部分」が最適な状態で成り立つように、耐久性や安全性などを研究・評価する技術のこと (構造技術/技術開発

Howどのように実現させるか

船の実海域性能を向上するためには、船の形状や構造、安全性などさまざまな性能のバランスを保つ技術が必要です。 そのため、この技術領域には波や風の中でも性能を発揮する船型の開発のほか、実際に海域でどのような現象が起きているのかを計測する技術の開発、船体の応力(※1)や加速度などの情報を収集・分析する構造のモニタリングなど、さまざまな課題に対して研究/設計/製造部門が連携して取り組んでいます。

船が前に進む時に真っ先に水の抵抗を受ける船首(※2)の形状は、船の推進力や燃費に大きく関わるため、JMUでは流体や構造の研究により、Ax-Bow®(Ship of the year 2001受賞、Japan)、LEADGE-Bow®といった数々の船首を開発。 先端のシャープな形状で波から受ける抵抗を低減し、波浪中での船速低下量を低減できる船首により、実海域でのシーマージン(※3)を小さくすることに成功。 性能を高く評価されています。

データ分析では、数々のシミュレーションや試験をもとに船を設計し、「Sea-Navi®」を用いて引き渡し後の船の航行データを収集。 海上での実際の水の流れなどを計測し、仮説検証と比較。 その結果をもとに形状などを設計し直して再び性能をチェック…といった形で検証を日々繰り返しています。

  • ※1 応力: 波を受けたり船が動揺することにより、船体の外板や構造材の内部に発生する力のこと。
  • ※2 船首: 船体の前端部のこと
  • ※3 シーマージン : 実海域を航行時に遭遇する風や波が性能に及ぼす影響(速力低下、燃料消費増加)
Sea-Navi®のイメージ図
CIIおよび格付けのリアルタイム表示

また、こうしたモニタリング技術は、船の開発のみでなく、運航をサポートする上でもとても重要な技術です。
目的地までの燃費や悪天候の回避などを考慮した最適航路の提示から、海象を考慮した航路の修正情報の提示、運航実績評価結果の即時提示を通して、低燃費で安全な運航につなげています。


Visionこれからの展望

近年は環境問題への提言やデジタル技術の進歩により、船そのものが大きく変化。 長い船の歴史の中でも特に大きな技術転換が起きている状況です。
どんな燃料、仕様の船になっても正しく性能を推定して技術を向上し、その時々のニーズに最適な船のあり方を追求することで、今の私達の概念では想像もできない、新しい形の船が生まれているかもしれません。
また、そうした新しい船をより良くしていくためには、リアルタイムで詳細な情報を収集できるモニタリングの技術向上も不可欠です。 さらにモニタリングとシミュレーション技術を組み合わせ、サイバー空間上に実海域で運航中の船を再現するデジタルツイン技術が活用されています。 これらの取り組みにより、船を引き渡した後も含めた実海域での性能を追求し、よりお客様にメリットを感じてもらえる製品をリリースしていきたいと考えています。