それぞれの技術領域の
英知を結集し、
船の性能を最大限に
引き出す「工夫」を追求。


概要Overview

船の建造や修理などを行う造船所に対して、そもそもの船造りの基盤技術・将来技術にまつわる研究開発グループや試験のための設備機器を備え、船の性能向上のための技術開発を行っているのが、JMUの技術研究所 GREEN & SMART WORKS LABORATORYです。

革新的に発展しているシミュレーション/デジタル技術を活用し、一般商船や氷海船舶の船型開発、省エネデバイスの開発、再生エネルギー利用などの研究開発を推進。
GREEN=脱炭素という名の通り、GHG削減に関わる分野の技術開発にも力を入れています。
技術そのものを世に生み出すことはもちろん、いち早く新技術を実際の船に実装するということを重要なテーマと捉え、設計との連携強化を図り取り組んでいるところです。

JMUでは、企業間でコンソーシアムを組んで共同開発を実施したり、MODE(※)にて、産学連携によるシミュレーション技術の研究開発を推進したり、企業や業界の垣根を超えて業界全体の技術向上をリードしています。

※MODE: 東京大学における産学共同研究の講座

  • ※1 低シーマージン: 実海域を航行時に遭遇する風や波が性能に及ぼす影響(速力低下,燃料消費増加)が小さいこと
  • ※2 高操船性: 舵利きがよく操縦が容易であること
  • ※3 コスト競争力のある船型: 燃費性能が高くかつ建造コストの低い船型

高度な研究開発を可能にする設備や機器

JMUの大きな強みである氷海技術や燃費性能は、技術研究所で保持している設備が担保しています。
世界最大規模の船型試験水槽なども保有しているため、実際の船により近い大規模な試験を行うことが可能です。
また、北極や南極など、氷が張った海の状態を再現することができる「氷海水槽」は日本で唯一、民間企業では、この技術研究所でのみ稼働している設備です。
JMUが有する高度な氷海技術の進歩を支えています。

試験中の氷海水槽
スーパーコンピュータ―を用いた
プロペラまわり流れの
大規模数値シミュレーション図

船の世界でも、実際の試験で測定するデータのみでなく、デジタル技術を用いてシミュレーションや実際の海域での性能をモニタリングした結果などを用いての研究が進んでいます。

世界屈指の計算能力を誇るスーパーコンピューター「富岳」を利用し、船のまわりの流れを、より大規模で精密な計算を行うプロジェクトにも参加しています。 これで得られた詳細データをもとに精度の高いシミュレーションを行うことが可能になると期待されています。 そうした先端技術と造船に関する流体や構造といった専門知識を組み合わせることで、さらに高精度・高効率な実験設備として進化を続けていきます。

推進性能フルモデルシミュレーション

計算機能の向上により、設計段階でもプロペラを回転させた数値シミュレーションが可能となっています。 詳細に形状を再現してシミュレーションすることで、より燃費性能の高い船の開発に役立てています。
また、コンピュータが自動的に船の形状を変化させて燃費性能の高い形状を導く、船型最適化技術を活用しています。

バラ積み船の船尾流れシミュレーション図

操縦性自由航走シミュレーション

数値シミュレーションの適用範囲を広げ、波の中での船の運動や波から受ける抵抗の推定、操舵時の運動の推定などに活用しています。 様々な現象をシミュレーションにより再現できるようになることで、水槽設備の制約により試験では確認することが難しい荒天海象中の運動や、高速航行中の操舵時の運動を把握することが可能になり、燃費性能が高く、より安全な船の設計に寄与することができます。

コンテナ船の旋回シミュレーション図

設備詳細Facility Detail

船型試験水槽

速度とそれに対応した馬力を推定するための実験を行う水槽。 この水槽試験結果を用いて、燃費の良い船を開発しています。

特徴

  • 長さ240m、幅18m、深さ8mの長細い水槽で、この上を曳引車(※)と言われる電車が8mから9mの模型船を引きながら試験を実施します。
  • 船型試験水槽としては世界最大の断面積(18m×8m)を誇ります。 大型の模型を用いることにより模型まわりの流れを実際の船の状態に近い状態とすることが可能なため、実際の船の性能より正しく評価できることが特徴です。

曳引車: 模型試験用の水槽の側壁レール上に水槽幅をまたぎ設置される電動台車.模型船を下部に接続し水槽内を曳引することにより水槽試験を行う

船型試験水槽
(全長240m × 全幅18m × 水深8m)
船型試験水槽での抵抗試験の映像

氷海水槽

その名の通り、凍った海面で船が氷を割りながら進むときの抵抗(馬力)を推定するための試験を行う水槽です。 現在、日本国内で稼働状態にある唯一の氷海水槽。 (2022年1月時点)

特徴

  • マイナス20度以下に冷やせる水槽で、自動製氷装置により1晩で厚さ6cmまでの氷を作ることができます。
氷海水槽
(全長20m × 全幅6m × 水深1.8m)

運動性能水槽

海上では、船は波の中を走ることになり、波がないときと比べて船の抵抗は増加します。 水槽内で波を発生させて海上を模擬し、模型船を用いて波から受ける抵抗を計測することで、波を受けた際の抵抗が小さくなる省エネルギーな船の開発に役立てています。
また、舵を取った際に船がどのように動くかを把握することは安全な航行を考える上で重要です。 模型船により操舵時の舵力や船体運動を調査し、十分な舵効き性能を持つことを確認しています。

特徴

  • 長さ70m、幅30m、深さ3mの幅の広い水槽で長辺と短辺から波を起こすことが可能です。 この中で模型船を引き、実験を行います。 最新の造波機を導入しており、様々な波を作ることができるため、実際の海上に近い状態での実験が可能となっています。
運動性能水槽
(全長70m × 全幅30m × 水深3m)
波の中での船の運動と抵抗を計測する実験の映像
無線で操舵し、船の旋回性能を調べる実験の映像
(映像は4倍速で表示しています)